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2016年07月04日

持続可能な開発目標(SDGs)を戦略にスタートアップの海外展開を推進するプロジェクト

イベントレポート

2016年6月23日(木)夜。

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科蟹江研究室、特任助教の小坂先生、一般社団法人コペルニク・ジャパン代表理事の天花寺様、株式会社Waris代表取締役/Co-founderの田中様のお三方にASACにお越し頂き、デロイトトーマツコンサルティング合同会社CSR・SDGs推進室の山田氏と佐藤氏の二名を加え、「持続可能な開発目標(SDGs)を戦略にスタートアップの海外展開を推進するプロジェクト」として基調講演、パネルディスカッションとQ&Aセッションを行いました。

今回のテーマとしている持続可能な開発目標(SDGs)は、193の国連加盟国が合意し、伊勢志摩サミットでも取り上げられた、今後の世界のトレンドを明文化したものです。これを戦略に組み込み、スタートアップ(SU)の海外展開を推進するプロジェクトを興していくべく、今回のイベント開催の運びとなりました。

今回は、起業家の皆さん、政府機関や大手企業の方々からご参加頂き、様々なステークホルダーにより成り立ったイベントを開催しました。

 

● 小坂先生の基調講演 SDGsと日本における実施



SDGsとは何か、その合意の背景から始まり、ミレニアム開発目標(MDGs)との違い、SDGsのメリットとデメリットを押さえたうえで、各国での実施フェーズと日本での取り組み、特に政府や産業界の動きについてご解説頂きました。

前身のMDGsは、8個の目標、21のターゲット、60の指標という3つの構成で、2015年までの目標で途上国の開発問題に焦点をあてたものでした。

これは、一定の役割は果たしたものの、特に先進国にとっては途上国支援の文脈以上になりえないものでした。

MDGsの反省を踏まえたSDGsは、持続可能な開発のための2030アジェンダが採択されたのを受け設定され、さらに広範な17の目標(Goals)、169のターゲット(Targets)と無数の指標で構成されています。

これを受けて、日本では5月20日に、内閣に首相を本部長とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置することが決定しました。

企業の活動としては、Open2030プロジェクトと題して、「目標12(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)」を中心とした企業のSDGs促進のためのプロジェクトが発足し、企業、NGO、研究者のパートナーシップを強める動きがあります。

他にも、企業へのメッセージとしては、国連グローバルコンパクトが「SDG Compass」といった企業の行動指針を提案しています。

企業の取り組みに活用できるものとして、SDGsポリシービルダーという、インターリンケージを考慮しながら活動可能な範囲を幅広く考えるためのツールもご紹介いただきました。
 

● パネルディスカッションとQ&A



パネルディスカッションにご登壇いただいたお二方よりも現場からの視座を得るべく、活動のご紹介を最初に頂きました。Q&Aの内容もいくつかご紹介させていただきます。

 

● 一般社団法人コペルニク・ジャパン代表理事コペルニク 天花寺様


「テクノロジーをラストマイルに」というミッションの元、貧困の削減を目指し革新的なテクノロジーを最も必要とする人々へ届ける活動を行われています。

主にベンチャー企業からなる、テクノロジー製造者から生まれた革新的なテクノロジーを、資金提供者からの寄付をクラウドファンディングにて募りつつ、現地パートナーによる必要なテクノロジーの選定、委託販売を介して最も必要とする人々へ届けられています。

これらの一環として、途上国進出を狙う会社へのアドバイザリーサービスや、主に大学研究機関からなるパートナーと提携したインパクト調査及び製品評価も行われています。



● 株式会社Waris代表取締役/Co-founder 田中様

 
時間や場所にとらわれない柔軟な働き方をキャリア女性に提供、どんな環境でも誰もが生き生きと働き続けられる社会の実現をミッションに、「プロxフレキシブル」な新しい働き方を女性たちへ届けるべくご活動されています。

企業と”総合職女性”をつなぎ、フレキシブルな仕事のマッチングサービス事業についてご紹介いただきました。

SDGsにて「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」という項目が含まれる中、先進国も他人事ではないという、実例となる問題へ挑戦されております。

日本政策投資銀行の第3回女性新ビジネスプランコンペティションにて「優秀賞」を受賞されるなど、数々の賞を受賞されている注目のスタートアップです。
 

● デロイトトーマツコンサルティング合同会社 CSR・SDGs推進室 山田氏、佐藤氏


SDGsの周知、事例の紹介を含む記事を自社のWEBサイトで公開するほか、「国連グローバル・コンパクト4分野10原則」の普及を行う企業で構成されるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の一員として企業の社会課題への取り組みを促進しています。

また世論啓発や、政策提言を行う非営利組織(NGO/NPO)やSDGsに関係する多くの省庁と連携した活動を行っています。

昨今では具体的な取り組みとして、英国でも実績のある「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラムを開始。

非営利団体へのプロボノ支援について対象分野をSDGsにも関連する「サプライチェーン全体を視野に入れた持続可能でエシカルな生産・消費の実現」及び「女性、若者、外国人を含む多様な人々の就業・経済的自立支援」に設定し、ソーシャルビジネスを支援しています。


● パネルディスカッション Q&A

 
Q (竹野)たとえば企業とスタートアップが連携し、それを政府が促進するべく補助金が入り、評価実施に国連大学等の研究機関が参加するということは可能ではと思うが、政府の活動がもっと大きな役割を持てないか?
A (天花寺様)JICA等政府機関との連携では、金銭面だけではなく、ネットワーク紹介や、お互いの強みを生かした企業へのアドバイス等を進めているため、そのような意味で、様々なステークホルダーの参加の元成り立っている

Q (竹野)Warisさんのサービスを海外に出す場合、どのようなアプローチ、困難を考えているか?
A (田中様)アプローチとしては、まず文化圏の近い東南アジア、中国や韓国が考えられる。日本と同じような問題を抱えいると考えている。

Q (竹野)デロイトトーマツコンサルティングとして世界的な取り組みは?
A (山田氏)一つはすでに紹介させて頂いている「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラムがある。これはすでに英国で実績がある。こうした世界のベストプラクティスを取り入れたい。また、ヨーロッパなどでは倫理的な企業経営が求められ、そこに合致しないと批判を受ける風土があるが、日本はこれからという段階。日本を世界の基準に合わせるべく、情報発信をしていきたい。また、良かれと思って実施した企業活動が逆効果になる場合もある。こういったことが無いようにも理解を広げていきたい。

Q (竹野)日本企業はここまでCSRを強く推し進めてきた。SDGsと重なる部分もあるが、ここまでの活動の延長をもってSDGsに対応していると言うことはできるのか。
A (小坂先生)それはぜひ積極的に発信していくポイント。日本企業はCSRなどを通して積極的な活動をしてきているが、国連などの国際的な場面でのプレゼンスが低い。たとえ当初SDGsを念頭に置いていなかったCSR活動であったとしても、今般のSDGs採択を受けて自社の取り組みをSDGsという枠組みを通してアピールできる。SDGsをツールとしながら、企業の本業における持続可能性に関する活動やCSRの活動をアピールするために活用してもらえればと思う。



 

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